限界理系大学生

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【レビュー】筒井康隆『旅のラゴス』は面白い!

【注意】この記事にはネタバレがあります。

 

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こんにちは。いつかは大きな旅をしてみたいChuShunです。

 

バックパック一つでぶらりと出かける、日本語の通じない、見たこともない物や人に出会うような旅行って憧れませんか?

 今回はそんな小説。SFの巨匠、筒井康隆先生の著書『旅のラゴス』について自分が感じたこと、おすすめな点をつづりたいと思います。

 

 

 

余談ですが、この本の帯に「ネット上で大人気!!」みたいなことが書いてあったんですが、これは、Twitter上でこの『旅のラゴス』がスタジオジブリで映像化されるというデマがひろがったことによるらしいです(笑)でも、実際に映像で見てみたい世界観だなぁと思います!

 

あらすじ

高度の文明が栄えていたが、突如荒廃してしまい、その衝撃で人々が超能力を手に入れた世界(たぶん地球とは異なる)を舞台に南北を繰り返し旅し続ける男ラゴスは旅を続ける中で様々な体験をします。

 

一つの場所にとどまったと思ったらまた別の地へと去っていくラゴスの目的は何か?ということをテーマにラゴスの生涯を淡々と描いた連作長編です。

 

魅力

世界観が徐々につかめるようになっている構成

この小説はラゴスの旅の様子を時系列順に12の短編から成り立っています。第一編『集団転移』では遊牧民のような生活をする民族と行動を共にしているラゴスが描かれます。「あぁ、旅とはこういうことか」と思い読んでいると突然『トリップ(転移)』という瞬間移動能力が登場します。

 

さらっと登場したので個人的に驚きつつも、ぐっと世界観に引き込まれました。この後にも、予知夢や壁を通り抜ける超能力、古代文明の遺産、この世界の学問水準が確変ごとに小出しにされて登場し、読み進めることがやめられなくなってしまいます。

ラゴスの人物像

物語中盤でラゴスは学級の徒としてポロという地で先祖の遺した古文書を読了することを目的の一つだと明かします。その結果10年ほど家から出ずにひたすらあらゆる学問を学びます。めっちゃ熱心。

 

このようにラゴスは、多少醒めたキャラクターでありつつも、良識ある、公明正大であるところにとても好感が持てます。

 

また、何かを成し遂げた途端、得られたものを引っ提げて、何かに取り憑かれたようにまだ見ぬ土地に身を投じる姿勢は個人的にとても憧れます。

緻密な世界観

ファンタジーものでありがちなのが、ある設定を付け加えたおかげで現実世界と比較して少し違和感を抱かせる矛盾がうまれるということです。

 

たとえば、瞬間移動をマスターすれば移動手段にウマや船は必要ないと考えてしまいます。しかし、この点は「強い精神力がいる」、「数時間かかることもある」というようなことを確かな描写力をとおして説明してくれるので、妙なリアリティをもってきます。

 

壁抜けも「頑張ればできるかも!?」と僕は思ってしまいましたね(笑)理系の敗北です。

賛否両論点

この本を読むにあたって、好みが分かれる部分もあります。

ラノベっぽい!?

僕の友人はこの本を「表現力が高すぎるラノベ」と言っていました(笑)

 

というのも、ラゴスは物語中盤、膨大な知識を得て(もともと賢いですが)旅した先でその知識を生かして「無双」します。また出会った女性のほとんどがラゴスに恋します。この点は四出て僕自身も「ラノベっぽいなぁ」と思っていました。

 

もちろん、ストーリーは面白いですが。

気になるラスト

最終編『氷の女王』は文字通り氷の女王に会いに行く話ですが、出会うことなく物語は終わります。俺たちの戦いはここらだエンドです。はたして氷の女王に会えたのかは読者の想像にゆだねられます。

 

初めて読んだときは、釈然としない感じがありました。最終章ということもあってか、すっきりとした読了を味わいたかったのですが...

まとめ

あまりガチガチのSFではなく、このジャンルに手をだしたことのない層でも楽しめると思います。賛否両論点はあると思いますが、卓越した表現力と物語の構成力から生み出される世界観には圧倒されるものがあり、完成度はとても高い作品に仕上がっています。

 

以上です!ながながとありがとうございました。